1年くらい前に、育ての親である魔王様と二人で爬虫類バーに行った。僕は爬虫類が大好きなのだが、魔王様はウロコが気持ち悪い!という理由で爬虫類が苦手であり、お酒に弱い僕の保護監督として着いてきたという背景がある。
僕たちが行った爬虫類バーは、飲み屋街の一角にあった。飲み屋街の入口から少し歩いた先にある新しいビルだ。看板はなかったが、ビルの中に入ってみると4階に目的地があった。
店内に入った瞬間流れてきたのは落ち着いたBGM……ではなくアニメソング。いや別にいいけど、久しぶりに聞いたよアムリタ。劇場版のツバサ・クロニクルの曲だったかな。良い曲だよね。
▽アムリタ▽
https://www.youtube.com/watch?v=U4QM7_jaV0E
まず入口に来て驚いたのが、両脇に設置されている熱帯魚の水槽だ。ネオンテトラが元気に回遊していた、下にいるのは小さい亀だろうか。もちゃもちゃと水草を食んでいる。
そして、バーカウンターの向こうにいた女性のマスターがこちらを向く。案内されるままに入口を抜けて席に着くと周りは爬虫類が飼われた水槽がずらっと並んでいた。
「すごい、何匹くらいいるんですか?」と僕が問うと、「今ちょうど151匹ですね、初代ポケモンと同じです。」と答えられた。アムリタが流れていたことから何となく察しがついていたが、マスターはサブカルがお好きらしい。多分オタクじゃなかったら赤緑のことを初代とは呼ばない。
酔い過ぎないためにアルコールが少なめのお酒を頼んだら、早速爬虫類との触れ合いタイムだ。開店直後に来たこともあって、僕たち以外には客がいなかった、選び放題である。
一番最初に触れあったのはコーンスネーク、明るいオレンジの体色をした小柄な子だった。腕に巻き付かせ、蛇が動くままに行く末を見守っていたのだが、最終的に僕の首に巻き付いてきて可愛かった。魔王様は「首!首に!アーーーーッ!死ぬよ!」とめちゃくちゃうるさかった。死にません。
次はレオパルド(アルビノ)、通常色の黄黒のレオパルドとは違い、アルビノなので肌が真っ白い。このお店の看板娘だそうだ。手の上を這い回らせていると、魔王様がこっちを見て「これはちょっと可愛いかも……」と言ってきたので、手の上に載せてあげたら楽しそうに触れ合っていた。良かったね。
他にも様々な爬虫類に触ったり、「蛇は2週間に1度餌をやればいいんですよ。」という豆知識を聞かされて驚いたりしていた。(品種によります)
その際、話の流れで僕が怪談好きだということが話題に上ったのだが、それを聞いたマスターはにっと笑って言った。
「ありますよ、うちの蛇の怖い話」
以下はマスターから聞いた話である。
まず、この店舗にいる爬虫類・両性類・魚たちは全て彼女のペットである。彼女はこのお店を抱える前、賃貸のアパートでペットを飼っていた。
あまり広い家ではなかったのだが、家にある2部屋の内1部屋を爬虫類の部屋、もう1つを自分の部屋として使っていたそうだ。
しかし、151匹の爬虫類たちが1部屋に収まるはずもなく、彼女の部屋も半分ほど爬虫類の部屋となってしまったらしい。
ある日の深夜、彼女は睡眠をとるために身体をベッドに横たえて電気を消した。すると、前の水槽がゴソゴソと揺れている。どうしたんだ?と思って視線を向けると二匹のトカゲが水槽の中を慌ただしく走り回っている。うわ~慌ただしいなァと思いながらも、眠気に襲われて彼女の意識は途切れた。
翌朝、彼女は目を覚ましてふと気付いた。あれ?そういえば……昨日揺れていた水槽には、トカゲを1匹しか入れてなかったはずだ。
でも、昨日は確かに水槽内をせわしなく動く2匹のトカゲを見た。一体なぜ……そう思いながら水槽を覗き見ると、トカゲはやはり1匹しかいなかった。
水槽の蓋はマスターでも開けるのに力がいるため、外部からのトカゲの侵入は不可能である。
その時、トカゲの近くに何かが落ちているのを見つけた。水槽に手を入れて拾い上げると、それは脱皮殻であった。
もしかして、昨日この水槽の中で動いていた二匹目のトカゲは脱ぎたての脱皮殻だったのだろうか。そんな妄想じみたことをマスターは考えたそうだ。
脱皮したばかりの抜け殻って、もしかしたら自分が抜け殻だってことに気づいてないのかもしれませんね、ドッペルゲンガーみたいに。だから本体と同じように動いたりしたんですよ。
そんな言葉で彼女は話を〆た。
僕が話を聞き終わる頃、魔王様はすっかりレオパルドの虜になってしまったようで、再びさっきのレオパルドと遊んでいた。帰るのをめちゃくちゃ渋られたが、人も増えてきたので店を出ることにした。
この店は魔王様が奢ってくれるので先に店外に出ていたところ、魔王様が包みを持って店から出てきた。お店で売っているお菓子だというので開いた僕は目を剝いた。
『昆虫クッキー 1個500円』
僕はクッキーを開けると、中身を全て魔王様の口に詰め込んで帰途に就いた。昆虫入りのクッキーは意外に美味しかったらしい。
縷々道 生我
2025-04-24 12:55:13 +0000 UTC蝶々
2025-04-17 06:39:39 +0000 UTC