僕は人からアドバイスを求められる事が多々ある。
魔王様を始めとして、数少ない友人、知り合いの同業者、知らない同業者……。アドバイスを求められるのは嬉しい、それだけ頼りにされているということだから。だけど、沢山のアドバイスをした後にふと考えてしまった。
『 自分は誰かに助けを求めたことがあっただろうか 』
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僕は己を器用貧乏なタイプだと評価している、何かに突出した訳ではないが、初めてのことならおおむね一般魔族以上に出来る。手前味噌だが、要領も悪くはない。
ただ、器用貧乏の限界は“そこ”までだ。
何かの漫画で読んだ台詞を引用しよう
『器用貧乏は生まれながらの天才と努力の人には勝てない』
まさしくその通りである。
僕は器用貧乏であるが故に、心からやりたいことが一つに定まらない。何かをやろうとしても途中で飽きが来てしまう。故に才覚溢れる人間や、才能の欠けを努力でカバーする人間には勝てないのだ。
不器用な人間だったら『自分にはこれしかない!』と一つの道へ全集中する事が出来るのだろうが、僕の前に広がる道は微細に枝分かれしており、そのどれもが輝いて見えた。
故に僕は、深度の差は有れど様々な道を途中まで行って、飽きたら最初に戻って道を選び直すという工程を繰り返してきた。
『 壁にぶつかったら道を変えればいい 』
そういう思考が常にあるからこそ、僕は人に助けを求めた事がほとんどないのかもしれない。だって、壁にぶつかって立ち向かわないのなら、悩みなんて生まれようはずもないのだから。
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ある日、僕は親代わりの魔王様にこの事を相談した。
僕は問う「広く浅く物事に触れるより、一つの道を極めた方が良いですか」、と。
魔王様は「珍しいね、君が私に悩み事なんて。」と笑った後に
「優劣は無いと思うよ」と答えた。そして言葉を続ける。
「確かに一つの道で他の追随を許さないのは素晴らしい、プロフェッショナルは見える世界が違うだろうからね。周りにももてはやされる。」
私みたいにね、と魔王様は言った。ちょっとウザかった。
「でも、君みたいに広く浅く物事に触れるのも特筆すべき美点があるんだ。何かわかるかい?」
急に問い返されて僕は首を横に振る、それがわからないから聞いているのだ。魔王様は気持ちよさそうに言葉を続けた。
「色々な世界の者と心を通わすことが出来るんだよ、沢山の道を通って、沢山の世界を知る君は、それらの話を浅いながらにする事が出来る。」
「どのジャンルの人間とも、ある程度専門的な話が出来るようになるのさ。その人が通った世界を、器用に勉強できるわけだネ。」
「故に、君は道を選ぶ度に世界全体の仕組みを学べるようになるのさ。一つの道だけ進んだ人間には到達できない領域だ。君は己の器用さを誇っていいんだよ。」
故に、両者に優劣はないってワケ。魔王様は話を〆て、最後にこういった。
「まあ、君がどの道を選ぼうと、その最終到達点に私が立ちはだかるけどね。」
本当に台無しだが、魔王様らしくてつい笑ってしまった。
何者になれなくとも、世界の仕組みを理解することは出来る。なるほど、悪くないなと思えた。
かつての僕のように、何者かになりたくて焦っている不特定多数の君へ
焦らなくても、君が踏み出した道の数だけ君は世界を知っているのだよ。
“無駄な時間”という物は、身体が動く限りはないのかもしれないね。
僕に堕落している時間も君に多くの気付きを与えられるよう、これからも活動を頑張ろうと思った出来事だった。
縷々道 生我
2022-11-07 15:31:29 +0000 UTC墓薙
2022-11-03 10:20:21 +0000 UTC