読み方は「オートクチュール」フランス語では最初のHは発音しない。原題を和訳すると『高級衣装店』の意になる。文字通り、オーダーメイドの衣装を作ったりするお店の話。Amazon Primeにて視聴(有料:500円)。
あらすじ:フランスの一流衣装店・ディオールのアトリエで、元スリの少女とディオールに長年勤めるお針子の婦人が出会う。二人は縫製の仕事を通して交流を深めていく……という話。
年齢や立場が全く違う『本来出会うはずのない二人』が出会って絆を深めていく作品にハズレ無し。最強のふたり、グリーンブック、うしおととら、全部名作だった。本作もそのジンクス通り、視聴後じんわりとした温かさが残る作品。
こういう作品はハッピーエンドで終わる事が多いから、安心してみる事が出来るのも良い。ネタバレだけどハッピーエンドです、でも良い作品だから見て欲しい。
本作には印象的なシーンが色々とあるのだけれど、中でも好きだったシーンは婦人が少女の『手』を褒めるシーン。綺麗な手をしている少女を褒めた上で「その手は窃盗をするのではなく、縫製に使うべきよ」と婦人は少女に道を指し示す。仕事に対して真摯に向き合い続けた婦人だからこそ説得力のある台詞だな、と思った。
僕は生活において仕事が全てだとは思っていない。どちらかと言えば、仕事は人生の一要素に過ぎないと考えている。だけど、仕事に真摯に取り組む人は本当に格好いい。誇りをもって、心をぶつけて、一つの事に取り組んでいる人間というのは、どうしようもなく気高いのだ。そんな気持ちを呼び起こさせてくれる作品だった。
婦人が仕事人間過ぎて生活力が終わっているのも面白かった。お互いがお互いに学びを得る、他人同士の交流というのはこうでなくては。
ミッドサマ―を手掛けた米配給会社『A24』が送る、新作ホラー映画。あまりに宣伝にミッドサマ―という文字が多用されていたので、アリ・アスターの最新作だと思っていたけど、制作にアリ・アスターは1ミリも関わっていない。あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!
あらすじ:牧場を経営している子供を亡くした夫婦。ある日、いつものように山羊の出産を手伝っていると、山羊のお腹から奇妙な生物が産まれた。“それ”は、山羊の頭に人間の身体を持つ怪物だった。亡くした娘の名前を付けて怪物を育てる夫婦だったが、果たして……というお話。
グリム童話を下敷きに、微笑ましいながらも不穏な交流を描いた作品。山羊の頭と人間の身体、という組み合わせは悪魔を思わせるし、主人公の妻の名前が『マリア』だったりするから宗教的なメタファーを含んでいる気がしない事もない。
で、本作の評価だが、端的に言うと僕の好みには合わなかった。確かに“子供”のデザインは秀逸だったし、初めて全貌が明らかになるシーンの演出は良かったが、ストーリー構成があまりに『語らなすぎる』。
読み手に解釈を委ねる作品は僕も好きだし、自分でもそういう作品を描きがちだが、あまりに投げっぱなしだと美学とかそういうレベルの話ではなくなるなと感じた。
広大な風景を映す時間が多く、視覚的な満足感はあったが、その時間でもうちょっとこう、説明をして欲しかったな。折角題材が良いのに勿体なく感じてしまった。考察ありきのホラー作品を見る、というよりは童話を見る、という見方をすれば楽しめると思う。
映画の帰り道、後ろのご婦人が「虚無や、虚無を見せられた」と憤っていた。
僕も心の中で、静かに、でも確りと頷いた。
『“空”に襲われる』というテーマ性が好きな作品、銀幕にて視聴。NOPE という単語はNoの増幅系で、強い否定をする際に使われる言葉である。字幕版の翻訳では『ありえない!』と表記されていた。
あらすじ:ハリウッドで唯一黒人が経営する牧場『ヘイウッド・ハリウッド』。牧場のオーナーであるオーティスが、空から降ってきた謎の飛来物によって死亡した。それ以来、その牧場の上には“何か”がいる。姿の見えないそれは、夜になる度に現れる。今夜もまた……というお話。
ユニバーサル・スタジオ製だけあって怖がらせ要素が少なめのホラー映画。区分としてはホラー映画なのだが、ゴア要素を含んだアドベンチャー映画に近い雰囲気がある。ジョーズとかインディ・ジョーンズとかそういう系列。
また、主人公達の行動もコミカルに描かれており、オーナーの亡き後に牧場を経営していた主人公とその妹は、“何か”を発見した時に逃げるでもなく怯えるでもなく“何か”を撮影して大金を得ようと監視カメラを仕掛け始める。そんな緊張感のない展開も遊び心を忘れないユニバーサルの映画らしく、肩の力を抜いて視ることが出来た。
何故か合間合間に殺人チンパンジーのエピソードが結構な尺で挟まるが、本編には関係なさそうだし、正直何故挟まっていたのかが未だに理解できていない。主人公と敵役の対比のためだろうか。
あと、巨大生物が好きな者は絶ッッッ対に楽しめると思う、是非見て欲しい。“何か”の全貌が明らかになった時、僕は黄色い歓声を漏らさないように自分で自分の口を抑えた、両手で。
全体的に完成度が高く、映像も豪華で満足だった。惜しむらくは、皆がこの記事を見ている時には既にほとんどの映画館で上映が終了している事だろう。Prime Videoに来たら是非とも見て欲しいな。
ホラー映画の伝統で、『流行ったホラー映画のパチモンっぽいB級映画が出回る』という物がある。例えばチャイルド・プレイのパチであるチャイルド・マスター、例えばエスターのパチであるエミリー。それらのパチモン映画にはある共通点がある。
それは『タイトルのパチモン臭のくせに割と面白いこと』だ。(例外はある)
本作は公開時期から見るに『クワイエット・プレイス』の二番煎じだと思われる。法則に従うなら隠れた名作のはずだと意気込んでAmazon Primeにて視聴。
あらすじ:日本で言う“なまはげ”みたいな行事『クランプス』。その祭事の中で、トンミという少年が行方不明になった。それから5年後、なんとトンミが発見された。DNA検査をした結果、間違いなく本人だったのだが、トンミはまるで別人のようになっていた。……というお話。
帰ってきた少年トンミは、両親に懐かず、教会を怖がり、動物に怯えられるようになっていた。男子3日会わざれば刮目すべし所を5年間も会っていなかったのだ、そのぐらいの変化はあって当然だ……と最初は考えていた両親だったが、女性の髪を引きちぎったり犬を殺したりと、その凶行は留まるところを知らない。
この謎が終盤に向けて回収されていく、投げっぱなしにならない所は好印象。ラストシーンでは思わずトンミくんを抱きしめたくなってしまった。そんなのってあんまりじゃん……。
総括すると『クズのピタゴラスイッチ』これがどういう意味かは、自分の目で確かめて欲しい。
二番煎じ感を出さなくても良かったのではないかな、というくらい気に入った映画だったが、これがホラー映画の伝統という奴なのだろう。
告知をTwitterで見かけた時から劇場に視に行こうと心に決めていた映画。2010年にフジテレビで放送された『四畳半神話大系』というアニメの劇場版である。
僕はこのアニメがすっっっごく好きだ。配信内でも触れたことがあるが、同じ作品を何回も見る事がほとんどない僕が、唯一繰り返し見ているアニメである。
朝早くからやっている映画だったので、6時に起床して劇場に赴き、ホットドッグとジンジャエールを朝ごはんとしながら視聴。
あらすじ:ボロアパート『下鴨幽水荘』にあった唯一のクーラーのリモコンが壊れた、そんな時に面々の前には本物のタイムマシンが現れる。意気揚々と過去に戻って1日前の下鴨幽水荘からクーラーのリモコンを奪取しようとする一行。しかし、過去に戻った後で“私”はふと思い至る。
『過去を変えてしまったら、未来の自分は消えてしまうのでは?』
そこに、やたらもっさりとした未来人・田村がやってきて物語が展開していく……という話。
本作は森見登美彦氏の作品『四畳半神話大系』と、ドラマ化もした上田誠氏の作品『サマータイムブルース』のコラボ作品であり、展開は概ね後者をなぞった作りになっている。
オリジナルの展開ではなくifルートのような作りになっているのだが、『四畳半神話大系』という作品はアニメで完結しており、“これ以上の話は語るに値しない”と作中で明言されている以上、安易に未来の話を作らないでくれて良かったと感じた。
僕に贔屓目がある以上正当な評価とは言えないかもしれないが、凄く×100が付く程に面白かった。原作がいわゆるループ物なので、それぞれのキャラの立ち位置を考えるのも楽しかったし、原作アニメのファンが求めている物がそこにあった。
四畳半愛好家は是非とも見に行って欲しい。多くをここでは語らないが、諸君の期待を裏切ることのない映画である、という事は断言できる。
本作は、堪らなく『サブカル男女の青春』の物語だ。それをあの解像度で書ける森見登美彦氏は多分陰キャだろう。いや、なんでもないです。
あまりに虚無過ぎて「は?」で感想を終わらせたかったが、これが有償のコンテンツである事を考えて思い直した。Amazon Primeにて視聴。1時間未満なので空き時間に見て欲しい。
あらすじ:家のトイレに悪魔が憑りついた、以上。
系統としてはハウス・シャークとかその辺、動画編集をバイトにやらせたのか?と思うくらいシュールな映像が流れる。
個人的にはトイレが火を噴くシーン(理科の実験のガスバーナーみたいな火が出る)で、レイヤーを入れ替える技術が無かったのか、どう見てもトイレの中ではなく手前から火が出ている所で馬鹿みたいに笑ってしまった。
また、1時間未満の映画なのに劇中に休憩時間がある。
また、1時間未満の映画なのにおじさんが2分くらい玩具の十手(サイ?)を振り回して練気を貯めているシーンがある。なお、その後十手は劇中に出てこない、は?
トイレの水にずっとぷかぷか浮いている目玉の玩具の存在が疑問だったが、終盤でデストイレの『目』を表現しているんだと気づいた。気付かなければよかった。
ドンキに売ってそうな軍服を着たおじさんがヴィレヴァンに売ってそうな手りゅう弾の玩具を迫真の演技でトイレに落とすシーンは涙なしで見る事は出来ないだろう。何の涙は僕にも分からない、絶対感動ではないと思う。
ベトナム戦争の映像を流しながら放屁音のBGMが鳴るという唐突な政治的主張も謎だった。ヴォー・グエン・ザップの幽霊に監督は取り殺されないだろうか、心配である。
とあるホテルの謎を巡るホテルマン達のミステリーコメディ、というあまり聞いた事のないジャンルに惹かれてAmazon Primeにて視聴。結論から言うと看板に偽りはなかった。
あらすじ:1968年、ある作家が休暇を利用しグランド・ブダペスト・ホテルに宿泊していた。そこで彼はホテルのオーナー、ゼロ・ムスタファに出会う。食事の席にて、ゼロ氏は作家に語り出す。移民である自分が何故このホテルを相続することになったのか、このホテルでどんな物語があったかを……と言う話。
本作は、現代から過去に時間が飛んだ上で、過去の作家の過去回想の中のホテルオーナーの過去語りと言う伝聞のマトリョーシカのような形で進んでいく。これだけ聞くと敬遠してしまうかもしれないが、コメディなので時系列を意識しなくても特に問題ない。眼前にある映像を楽しめるような作品である。
1968年、時代背景的に移民の風当たりは強く、移民がホテルで働くことすら良くは思われなかった時代。そんな時代に現ホテルオーナーであるゼロ・ムスタファが、どのようにしてホテルを含めた莫大な資産を得るに至ったかをテンポよく描いている。
全体的に話はシリアスで暗めなのだが、登場人物たちの態度、掛け合いでシリアスさが丁度良く削がれていきシュールな笑いを産み出す。
さらに、本作を語る上で外せないのは高価な絵を巡った逃亡劇だろう。映画開始1時間頃からおふざけのリミッターが徐々に外れていき、それまではぎりぎりミステリーの体を保っていたのが、コメディー色の覇気が隠しきれなくなってくる。
氷の大地をスキーで逃げる男、それを追う主人公達……というシーンは終始吹き出しそうになりながら見ていた。
また、映像の作りはシュールな脚本に反してとても丁寧だ。過去回想のシーンでは動画のアスペクト比がその時代に使われていた比率に変更されているなど、非常に凝られた映像美を持った作品でもある。
プライムビデオのオススメ欄に上がっていた作品、殺人羊が惨劇を巻き起こすアニマルホラー……という触れ込みが物珍しくてAmazon Primeにて視聴。
あらすじ:舞台はニュージーランドの長閑な牧場。そこに過激派ヴィーガンが遺伝子工学の果てに生まれた突然変異の羊を放った。突然変異の羊に噛まれた動物は血に飢えた捕食動物になってしまう。そして牧場は惨劇の舞台になっていく……という話。
邪悪なヴィーガンの二人が『肉を食べると足が遅くなるからな!』『この部屋、風水的に最悪ね……(死体を見て)』などの名言を連発する。映画の冒頭を見る限りだと、監督は多分ヴィーガン活動家を憎んでいる。
羊が凶暴化していくまでは普通にホラー映画のテイストだったのだが、羊に噛まれた人間が羊人間になるよ!という新しい設定が追加されてからはもうすっかりコメディ映画になってしまった。これLAMBで見た!こっちは羊だけど!
一番笑ってしまったのは人間が羊人間になる過程のシーン。じわじわと羊に侵食されていく感じなのかと思っていたが、実際は超高速振動をした後いつの間にか羊になっていく。これもう笑わせに来てるよね?
この手の映画にしては珍しく、サブキャラが死なないし皆有能。ちょっとグロめのエボリューションみたいなイメージで見ると間違いないかもしれない。オチは最悪だった、いや、良い意味で。
ふと思ったんだけど、ホラー映画って『クソ映画しぐさ』みたいなのがあるよね。スラング的な『クソ映画』要素をわざと入れ込むみたいな。本作はそういった『クソ映画しぐさ』を妙に洗練して織り込んできた映画だなと感じた。
以前から好評のコメントを見かけており気になっていた映画。10月はいっぱい映画を見る月間にするぞ!と意気込んで Amazon Primeにて視聴。ホラー映画と銘打たれてはいたが、血みどろ青春活劇である。
あらすじ:ファッションも冴えない内向的な女子高生・ミリーはある日、巨漢の連続殺人鬼ブッチャーに襲われる。ブッチャーが持っていた呪いの短剣『ラ・ドラ』で刺されたミリーが翌朝目を覚ますと、自分を刺したはずの巨大中年男性連続殺人鬼ブッチャーと身体が入れ替わっていた。元に戻すには『ラ・ドラ』でブッチャーの精神が入った自分の身体をもう一度刺さなければならない。身体を取り戻すために女子高生系巨大中年男性連続殺人鬼が奮闘する話。
手放しに面白かった、今月視た映画の中でトップかも。身体が入れ替わるという展開自体は使い古されているが、古さを一切感じさせないテンポの良さ、サブキャラの魅力が詰まっていて、1時間40分があっという間に感じた。
主人公のミリーはあらすじの通り冴えない女の子。学校では異性同性問わず虐められ、意地悪な教授から目の仇にされており、家では娘に依存する母親からモラハラを受けている。ミリー自身もそれに対抗するわけではなく、運命を受け入れてしまっている。
ところが、巨大中年男性ことブッチャーが中に入ったミリーは豹変する。自分を虐めた女の子、意地悪な教授を徹底的に痛めつけて殺し、派手なファッションでクラスの目を引いた。(巨大中年男性に何故そんなファッションセンスがあったかは不明)そんな『暴力装置が無自覚に問題を解決する』ような展開も本作の楽しい部分の一つ。
何よりすごいのは俳優の演じ分け、さっきまで淡々と人を殺していた巨大中年男性が女の子走りで町中を駆けたり、気弱だった女の子がドスの利いた啖呵を切ったりと、本当に中に別人が入っているような演技は必見。
考えさせられた点もあった。巨大中年男性の身体に入ったミリーが自分を虐めていた男子生徒にお仕置き(相手を掴んで持ち上げる)するシーンだ。この出来事をきっかけに、気弱だったミリーは「自分が強ければ、下を向かなくていいんだ」と考えるようになる。ミリーにとって『逆らえない存在』だった虐めっ子は、皮肉にも殺人鬼のおかげで『ただの人間』になったのだ。
これが、この映画を『青春活劇』だとした由縁である。内向的で何にも逆らう事が出来なかったミリーは、この事件を経て自分の力で、時には友人の力を借りて物事を解決できる人間に成長していくのだ。
縷々道 生我
2022-10-12 15:32:45 +0000 UTC彼岸
2022-10-12 10:23:10 +0000 UTC縷々道 生我
2022-10-06 16:24:43 +0000 UTCワイズマン
2022-10-06 15:42:29 +0000 UTC縷々道 生我
2022-10-06 15:39:41 +0000 UTC墓薙
2022-10-06 15:04:59 +0000 UTC