これは度々話していることなんだけど、僕は夏の夜が好きだ。
華やかな祭囃子が聞こえていると、尚良い。
音楽なんかも、夏の夜の匂いがするものが好きなんだ。
この前サブ垢に貼ったこの曲も、とても夏の匂いがして好ましい。
https://www.youtube.com/watch?v=M_CYMdG4owA
いつも通り、夏の余韻を感じる曲を聴きながら、僕は考えた。
そう考えた僕は、魔王様に電話をした。
「僕って、なんか夏の夜の思い出みたいなのってあります?」
そう問いかけた僕に、魔王様は昔の思い出を話してくれた。
◆◆◆◆
これは、僕がまだ幼い魔族の頃の話だ。
今は散歩が好きな僕だけど、当時はあまり外に出ること自体が好きではなかった。
同じ魔界小学校に通っていた子供が外でサッカーをしているときに、部屋で本を読んでいるような子供だった。
そんな僕を見て、このままでは引きこもりになってしまうと懸念した魔王様は、僕を何とかして外に連れ出すべく、散歩に誘ってくれたそうだ。しかし、当時の僕は「太陽が嫌いだから嫌だ。ダルい。」と断っていたそうだ。我ながらヒネた餓鬼だ。
困った魔王様は、太陽が沈んだ後……夜に散歩をしようと提案してきた。
僕はしばらく渋っていたが『太陽が出ていない時間なら……』ということで、魔王様と二人で初めての散歩に行くことにした。
初めて出歩いた夏夜の風景に、僕は大層目を輝かせていたそうで、魔王様と手をつなぎながら、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたそうだ。
一時間くらい散歩をした頃、魔王様の耳に何かが弾けるような音が聞こえたそうだ。
魔王様が何事かと辺りを見渡していると、幼い頃の僕は一点を見据えて感嘆の声を漏らしていた。
魔王様が僕の視線の先、空へ顔を向けると、空に大は輪の火花が咲いていた。
ちょうど、その日は近くの川で花火大会がやっていたようで、その風景がこちらまで届いていたらしい。
それを見た当時の僕は、初めて見る花火に衝撃を受けて、固まっていたそうだ。
その日から、僕は夜になると魔王様に散歩をせがむようになったらしい。
そして、散歩に行くたびに「今日は花火がない……」としゅんとしていたそうだ。
それから、魔王城では頻繁に花火大会をするようになったらしい。
なんとなく、僕が夏の夜が好きな理由が分かった気がする。
衝撃を受けた原体験は、今になっても僕の記憶に深く刻まれており、趣味嗜好に影響を与え続けているのだろう。
そんな、夏の日の思い出。
縷々道 生我
2024-07-04 09:59:49 +0000 UTC蝶々
2024-07-04 02:46:00 +0000 UTC