最近、魔王様と電話をした時に思い出した話を書いていく。
短いし、オチもない話だけど、良かったら聞いて欲しい。
◆◆◆◆
これは、僕が人間年齢で言うと七歳くらいの頃に体験した話だ。
当時、僕はお爺様の家に行くのが好きだった。
お爺様の家は、辺りを山に囲まれた集落の中にある。
森と山、湖に囲まれた静かな土地だった。
お爺様の家に行くと、僕は知的好奇心の赴くままに、様々な場所へ散歩に行った。
誰かが作ったあばら家、既に稼働していない工場……魔王城の近くでは見ることのできない世界を知ることが、まるで冒険の旅をしているみたいで、好きだった。
その日も、お爺様の家に行った僕は、一人で山の中へ遊びに行った。
山と言っても、ほとんどの場所は魔族が通れるように舗装されており、山の奥地に行かなければ安全な場所ばかりだ。そのため、魔王様も「夕方までには帰るんだよ」と言って、特に止めることはなかった。
山を巡って、沼を遠巻きに見て、僕は小さな池に辿り着いた。
そこには、魚や虫などの生物が沢山いた。
僕は切株に座って、そうした生命の営みを遠巻きに眺めていた。
その時、【何か】と目があった気がした。
え、何?と思ったけど目の前には池と背の高い草むらしかない。
でも、目を逸らしたら、見えない【何か】が此方に向かってくるかもしれない。
何だかそんな風に思えて、目を逸らすことができなかった。
10分くらいか、それとも10秒くらいか、妙な時間が流れる。
不意に、草むらが大きく揺れた。
その瞬間に、僕は確かに見た。草むらからはみ出る、人間の足のような物を。
もう、【何か】の視線は感じない。
【何か】がいなくなったことを確信した僕は、駆け足でお爺様の家に帰った。
そして、自分が見た物を魔王様に話した。
魔王様は笑って「気のせいだよ、気のせい!それか不審者だな!」と言った。
お爺様は「山の神様かもしれないな」なんて言っていた。
でも、僕はあれが人でも山の神様でもないと確信している。
だって、【何か】と視線が合っている時、ずっと嫌な臭いがしたんだ。
ヘドロのような、血のような、嫌な臭い。
あんな臭いを放つ者が、人や神様であってたまるか。
縷々道 生我
2024-06-22 17:38:35 +0000 UTC蝶々
2024-06-21 14:05:14 +0000 UTC