先週末、魔界に帰って古い友人(魔族)の結婚式に参列してきた。
その友人(魔族)とは、実に五年ぶりに会うことになる。
僕は人(魔族)付き合いに積極的なタイプではないので、そんなに仲良くない人(魔族)の結婚式は、招待されても理由をつけて参加を断ることが多い。
しかし、この友人(魔族)は、僕の方から結婚式に参列させてもらいたいと思うほどに、良くできた人間(魔族)だった。
彼は何が起きても決して他人(魔族)を責めず、かと言って自分を責めることもなく、いつも陽気に微笑んでいる人だった。そんな素敵な人柄(魔族)を持った輩が幸せになる瞬間に、僕も立ち会いたくなったのだ。
(以下、注釈は面倒なので省略する。)
結婚式当日の朝、鏡を見ながら着慣れないスーツに袖を通し、前髪が野暮ったくならないよう後ろにまとめる。ピアスも式典に参加するために地味な物に付け替えた。
新郎新婦を祝う『友人』に徹するために、己の存在を希釈するのである。
会場に着くと、受付時間前ということもあって、ほとんど人がいなかった。
参加人数に対して、明らかに設置数の少ない豪奢な椅子に座るのはためらわれたので、僕は近くの喫煙所で時間を潰すことにした。結婚式場は、灰皿のデザインにすら複雑な意匠が施されている場合が多く、それを見るのも結婚式に参加する楽しみだ。
僕がぼうっと煙草をくゆらせていると、「あれ!久しぶり!」と話しかけられた。
そこにいたのは、知らない女性だった。
でも、恐らく向こうは僕を知っている。こ、コイツは誰だ……。
◆以下会話◆
女性「本当に久しぶりだね~。でも、あんまり変わらないね。」
僕「あぁ……そうかな。はは……。(誰だ?)」
女性「っていうか、煙草吸うんだ。なんか以外。そういう不良っぽいことしないと思ってた。」
僕「煙草は嗜好品だからね、別に不良だけの特権じゃないよ。(全く思い出せない。)」
女性「それでサ。山口君はどんなお仕事してるの?」
僕「あの、僕縷々道って言うんですけど……。」
女性「あっ…………。」
◆会話終了◆
完全に人違いだった……。
喫煙所に来たにも関わらず、煙草の一本も吸わないで彼女は去っていった。
顔も知らない山口君の振りをして、その場しのぎをするのも優しさだったのだろうか。なんて、柄にもないことを考える。
というか、そんなに僕に似てる人がいるのか……。
◆◆◆◆
そんなことをしていると、結婚式の時間になった。
友人が生まれてからの遍歴が映像で流れ出す……。
なんだか、知らない人の記録を見ているような気がした。
僕が彼と交流を持っていた期間というのは、彼の長い人生のほんの一部でしかなかったということを実感した。
彼の時間の一部と、僕の時間の一部が混ざり合い、一つになっていた過去。
その繰り返しを人は【人生】と呼ぶのかな……などと、考えた。
結婚式はつつがなく進み、そして終わった。
◆◆◆◆
披露宴の際に友人と少しだけ話をする機会があった。
彼は僕に「遠い所に住んでいるから、来てくれるかどうか不安だった」と言った。
僕は笑って「友達だからね」と答えた。
こんな言葉を交わし合える友人がいることを喜んで、僕は帰途に就いた。
追記:『そういえば、引き出物はなんだったんだろう?』と思って紙箱を開けると、そこには大量のクロワッサンが入っていた。消費期限は明日……。僕は、魔王様の部屋の机の上にクロワッサンの箱を載せて、帰りの電車の手配をした。
追記2:僕と間違えられた山口は、僕とは似ても似つかないジャンジャカパリピだった。煙草どころか大麻くらいならやってるだろ。山口。
縷々道 生我
2024-04-24 11:57:55 +0000 UTC縷々道 生我
2024-04-24 11:57:13 +0000 UTC蝶々
2024-04-24 07:52:56 +0000 UTCちゑ子
2024-04-24 06:41:13 +0000 UTC